恋愛指南は乙女ゲームで
「お前は特別だ。今どき珍しい男臭さだし」

「えっ俺、臭い?」

 それはいけない。
 慌ててくんかくんかと己を嗅いでみる。
 特に気にはならないが、自分の臭いは自分ではわからんというからな。

 焦っていると、ばこんと頭を殴られた。

「馬鹿。そういう意味じゃねぇっての。女子力が皆無なんだよ。いや、こう言うと、どうせそんなもん必要ないとか言うだろ? そうじゃないんだよ。お前の場合、女心ってものを全く理解してない。お前ほど女心を理解しない奴も珍しい。それはすなわち、お前の中には女子力ってものが、これっぽっちもないからなんだ!」

 滔々と流れる小言(?)に、俺はただ圧倒されるばかりだ。
 ここまできっぱり言われると、そうなのか、と納得してしまう。
 俺もまだまだ純粋なのだ。



<隣の課の先輩が、何だかやたらと田村くんに話しかけてる。こんなに気になるのは、私が意識してるから?>

 ゲームは進み、何だかライバルの登場のようだ。
 つか職場だろ。
 仕事に集中しろ。

<そんなとき、たまたま帰りに田村くんに会った。同じマンションなので、自然と一緒に帰る形になる>

<選択してください>

 来た! これが乙女ゲーム言うところの『恋の別れ道』か。
 ふむふむ?

<A.黙って横を歩く
 B.ここぞとばかりに先輩のことを聞く
 C.いつもと変わらず、他愛もない話をする>
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