ガラクタ♂♀狂想曲
「ビールないよ」
「あ、うん」
「どうする?」
なんか私、情けないなあ。
弱っているデンちゃんを見て、守ってあげたいと思ったはずなのに。だけど守るってどうすればいいのだろう。
何かを考えているのか、少し間を空けたデンちゃんは、その隙間を埋めるかのように煙草へ手を伸ばした。
カチンっとジッポの乾いた音。そして微かな音を立て、チリリとフィルターが焦げる匂い。それはもう嗅ぎなれてしまった、デンちゃんの煙草。
「——あのさショコちゃん」
そして煙草の先っぽが、いつまでも赤々と燃え上がるんじゃないかってほど深く吸い込んだデンちゃんは、じれったいほどゆっくりと長い煙を吐き出したあと続ける。
「中学んときで、受験前。俺の家庭教師が瑠美で——」
そこで一旦言葉を切り、煙草を銜えたデンちゃん。その煙が全部吐き出されるまで待った。
「ママ——、じゃなくて、えと、お袋は、親父の暴力で出て行ったっきりで、そこに瑠美がひょっこり現れた。親父の彼女なんて、そのときは知らなくて。だけど俺は瑠美が嫌いでさ。親父の言いなりになるのが嫌だって理由もあって」
返事を求めているのか、そこで私に向かってちょこんと首を傾げた。
「こんなの興味ない?」
「——ある」
「ほんとに?」
「たぶん受け止める準備は出来てると思う…」
受け止められるかどうかなんて、正直自信はない。だけど、なにかの糸口が掴めるかもしれない。
すると指先で弄んでいた新しい煙草に火をつけたデンちゃん。さっきまで吸っていた煙草は、まだ長いまま消され灰皿に埋まっていた。