お説教から始まる恋～キミとの距離は縦２メートル～

縦２メートル下のキミ。

わたし、仲田 莉那！
２９歳。独身。彼氏ナシ。
ほぼ無職。引きこもり、もとい隠居生活絶好調☆

最近ニヤニヤして過ごしています。


まぁ、ニヤニヤ楽しく暮らしているのはお陰様で随分前からなのだが、最近のニヤニヤの理由はインテリメガネである。

具体的には、インテリメガネの、いびきである。


もしかしていびきかもしれない、と思ったあの夜から、ゴォォンとかブゥゥンとかいう階下から聞こえてくる音に敏感に反応するようになった。
２階にいてあの音量で聞こえるということは、同じ部屋にいたらけっこうな大きさのいびきのはずだ。

あの人が、あんなに大きないびきを。
ぷーー、くすくすくす。

…しょうもないと呆れられるだろうか。
自分でもあんまり良い性格でないことはわかっている。
それでも面白かった。
あの真面目そうなインテリメガネが、大きないびきをかいて無防備に寝ているところを想像すると、不思議とニヤニヤしてしまった。

いびきは、早い時間だと夜８時頃から、遅い時間だと明け方にも聞こえた。
気になり始めると止まらなくて、今度はだんだん心配になってくる。
いびきをかくのは気道が狭くなるせいだというが、ストレスが原因とも聞いたことがある。
疲れているんだろうか。仕事が忙しいんだろうか。
ストレスの原因が、わたしだったりするのかしら。

お互いの名前も知らない、ただ、同じアパートの上下階に住む住人というだけの関係。
顔を合わせて話したことも１度だけ、しかも騒音の注意を受けたという苦笑せざるを得ない数秒間ではあったが、気が付けば意識する存在になっていた。



< 37 / 51 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop