お説教から始まる恋~キミとの距離は縦2メートル~
床にたまった埃を軽くはたいて、冷たい床に耳をつける。
ボーーという振動音の奥に、テレビの音が聞こえた。
今日は、おうちにいらっしゃる。

この部屋の床の厚みがどのくらいあるのか知らないが、インテリメガネが椅子に座ってテレビを見ているとして、わたしが床に耳をつけているから、今、二人の距離は2メートルというところだろうか。

面白い。
もし私にだけこの床が透けて見えたら、どうだろう。

わたしの視線に気が付かずに、日常生活を送るインテリメガネ。
それを上から眺めるわたし。

ぷーー、くすくすくす。

…なんだかストーカーみたいだと自分でも思うが、
異性として好意を抱いているわけでは、断じてない。


騒音については引き続き気を使っている。
特に夜中は、SNSを開いたり、面白い動画を見たり、イベントストーリーを読むことをやめた。どうしても声をあげてしまうからである。

怒鳴られた日からビクビクしながら生活していたが、ベランダから声を掛けられることも、ポストや自転車にいたずらされることもなかった。
向こうも、最近上の階の奴おとなしくなったな、と思ってくれているだろうか?



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