例えば危ない橋だったとして
ふたりを隔てる距離の長さは

黒澤くんはやはりわたしに壁を作っているような雰囲気を醸し出していた。

仕事上も必要以上に関わろうとはしないし、もちろん仕事以外でも積極的に関わろうとしない。
お互いに質問がある時だけ話し掛け、大人の対応をする。

更ちゃんと飲みに行ってから1週間が過ぎた頃、そんな日々にもずいぶんと慣れて来た。
だけど、相変わらず夜はよく眠れなかった。


またもや、昼休みのトイレの中から、噂話が聞こえて来る。

「最近黒澤さん、榊さんのこと避けてない?」
「榊さんフラれたんじゃないの~? 今の内かもよー! チャンス!」

いつかのようにトイレへ入ろうとした足をUターンさせて、廊下へ戻った。
……まぁ本当のことだから、はなから反論する気が無いにしろ、何も言い返せない。
しかし、傍からもそのように見えることに、何となくショックを受ける。

そういえば、黒澤くんは合コンで良い女の子がいただろうか。
黒澤くんがその気にならずとも、女の子が放っとくわけないし……。
もう新しい人が居るかも。
いずれはそうなると、わかってはいることだけれど、胸が傷んだ。

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