例えば危ない橋だったとして

わたしは恥ずかしくて顔を隠しながらも、更ちゃんへ目線を移した。
更ちゃんがもどかしそうな面持ちでこちらを凝視している。

更ちゃんの言う通りだ。
わたし、ちゃんと好きだって言ってない……。

思い知った瞬間、わからなかった自分の気持ちが、輪郭を現した。


好きな気持ちが大きくなりすぎて、怖くなってしまった。

怖かったのは、壊れてしまうことだ。


わたし達の関係には、名前がなかった。
だから、壊れることもないような気がしていた。

この関係に名前を付けたら、形を作ったら
いつか壊れてしまうんじゃないかって


恋人じゃなかったから、持てていた思いやりや相手を尊重する気持ちが、相手に甘え、伸し掛かり、いつか失われてしまうような気がした。
以前の恋愛のように。


更ちゃんが心配そうに見守ってくれている中、わたしは自分の気持ちを推し量っていた。


わたしが信じられないのは、相手のことなのか
それとも、自分自身なのか

そんな思いが、頭を過ぎった。

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