例えば危ない橋だったとして

そんな優しくされたら、勘違いしてしまう。
あの頃のように、戻れるんじゃないかって……。

最後にふたりで会った日から、もうじき1ヶ月となる。

あの夢のような日々は、わたしの夢だったのか? と思える程、現実味がなくなって来ている。
だけど、そんなはずはない。

あんな鮮やかで煌めいた恋を、わたしは知らなかった。


席に着き、頭に巡らせた。
落ち込んだり体調を悪くしたりして、これ以上人様に迷惑を掛ける訳にはいかない。
もっと毅然と生きていたい。

きっと黒澤くんは、わたしよりずっと大人なんだ。
泣いてばかり、悩んでいるだけのわたしとは違って……。
わたしも何とかなれるだろうか、黒澤くんのように。


深呼吸して、前を見据えた。

元気がないと、何も出来ないんだ。
何事も、話はそれからだ。

ディスプレイにシステムを開き、キーボードを叩いた。

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