例えば危ない橋だったとして
自分をさらける勇気
翌月曜日、勤務が開始してもわたしは何だかぼんやりとしていた。
何故あんなことを口走りそうになったのだろう。
その考えが、頭を占拠している。
週末のデートは心の底から楽しかった。
だからこそ、今の気持ちがもやに包まれていることを感じ取った。
何やら自分の心の波が、もうすぐそこまで寄せて来ている感覚がしていた。
仕事は年明けからずっと忙しく、週明けも重なり更に忙しい。
ひたすらキーボードを叩き依頼をさばき続けたが、30分に一度くらいの頻度で、気付くと手が止まり呆けている。
「榊」
皐に呼び掛けられ、心臓が縮こまる。
「はい」
「田浦さんから設備構築の依頼番号被ってるって連絡来たんだけど……管理簿入力した?」
問い掛けられ、顔面蒼白となった。
入力……してない気がする。
依頼番号は管理簿の続き番号を取る。
午前中に依頼をかけた時、番号だけを取って内容の入力が漏れていたのだ。
これでは後に入力した依頼と、番号が被ってしまう。
「ごめんなさい……。すぐ訂正します」
「人間のやることだから、ミスはつきもの」
皐は穏やかに笑顔を返してくれたが、わたしは更に落ち込んで行った。