例えば危ない橋だったとして

大学を卒業し、就職をした頃は、まだ付き合いは続いていた。
研修などに気を取られ、思い詰めることは減って行った。
新しい世界への期待もあり、活動的に毎日を過ごした。

しかし、お互い慣れない環境に身を置き、仕事上の失敗などが続くと、また悪循環に陥るのだ。
わたしは心の闇に囚われるあまり、会社を休んでしまったこともある。


さすがに落ち込み、仕事に影響を出す程ならと、別れを考えた。
ただ、別れた後の自分はどうなってしまうのだろうと考えると、背筋が凍るようで、自信が持てなかった。
更に落ちて行ってしまったらどうしよう、その考えばかりが頭を占拠して離れなかった。

わたしは別れを決意出来なかったが、彼はそんなわたしに呆れたような声を出した。

「もう本気で疲れた、もうやめよ。さよならだ」

涙を流したわたしに、彼は追い討ちを掛けた。

「またそれ……俺だって泣きてーけど! いーよな女は」

こうして、引きちぎるようにわたし達は別れた。


立ち直るのに、1年近くを要した。
更に月日は流れ、時間により癒された心は、今ではすっかりはつらつとしている。

仕事は充実しているし、毎日楽しいけれど、恋愛はしないと決めた。
もうあんな失態は犯すまいと、心に誓ったんだ。

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