例えば危ない橋だったとして

マンタ、エイ、クジラ、クラゲ
どの生物もゆったりと水中を漂っている。
黒澤くんとはしゃぎながら、神秘的な光景に、わたしの心もゆったりと漂うような感覚に陥った。
余計なことは考えず、いつも穏やかに生きたい。
そう出来たらどんなに良いだろう。

そして、黒澤くんの笑顔は、漂える波のように、わたしに安らぎを与えてくれた。

この人のことを、無心に信じられたらなら、良かった。
いつの間にか、恋人繋ぎになっている手元に力を込める。
黒澤くんも、絡ませた指を、更に強く握り返した。


水族館横のレストランで、簡単に食事を取った。
それから、外のベンチに座った。
時刻は21時過ぎ。目の前は海で、11月のこの時間とても寒いけれど、等間隔に並べられたベンチには、ところどころカップルが座る。

「さっみぃ」
「ほんと、寒いね……」

わたしは指先に息を吹き掛けた。
黒澤くんは自分の腕をさすっていたが、おもむろにその左手をわたしの肩に回し、身体を引き寄せた。
黒澤くんの胸元に頬が触れる。

「くっついた方があったかいだろ」

そうつぶやいた黒澤くんの鼓動の速さに、つられてわたしの心臓も急速に脈打つ。
黒澤くんも、ドキドキしてる……?

しばらくその体勢のまま、お互いに動かなかった。

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