例えば危ない橋だったとして

「お申込の住所は3丁目7-19で頂いているんですが、地図の場所が3丁目6の所になっているんですけども」
『お客様は間違いないって仰ってましたけど……』

「ですから、住所が合っているなら地図が、地図が合っているなら住所が違っていると思いますので、もう一度確認して頂けないですか?」

しばし不毛なやり取りを繰り返し、やっとのことで電話を切って溜息。
異動して来たばかりのわたしが言うのも何だが、普通に考えれば理解出来るような当たり前の内容の意味をわかっていない営業さんが結構いて困る。
営業さんと無駄に格闘している間に午前中が終わってしまったが、業務にはきちんと従事出来たと思う。


鐘が鳴り、黒澤くんが立ち上がる。
いつもの様に食堂に行くんだと思ったら、わたしのデスクに付箋を貼り付けて出て行った。
……ん? 不思議に思い、付箋に視線を落とす。

“資料室で待ってる”

……これは……。
瞬間、わたしの心臓は大きく音を立てた。
これって……いわゆる、逢い引き!?
まさか資料室で、お弁当一緒に食べよう~……なわけないし。
いやでも、もしかして……話があるとかかも……。

わたしはあらゆる可能性を想定して、資料室へ向かった。

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