例えば危ない橋だったとして

何ごとかと、口をつぐんで黒澤くんを見つめ返した。
すると、わたしの顔が余程こわばっていたのか、眉間をつままれてしまった。

「皺、よってるし」
「!?」

わたしは慌てて額の辺りを手で隠した。
黒澤くんは微かに眉を下げたような笑みを浮かべ、続けた。

「あんま、気にすんなよ」

……優しい……。
胸がじんと熱くなって、涙が出そうだった。

どうしようもないわたしに、どうしてそんなに優しくしてくれるんだろう。

そのまま、乗り換え駅まで一緒に帰った。


わたしは週末の間考えて、黒澤くんとまっとうに付き合うには、やはり“自立”がキーワードだと思った。
とにかくまずは仕事だ。
恋愛にうつつを抜かして、うわの空にならない。
そのことを第一に考えて、出社した。

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