好きが涙に変わって溢れてく。

「ほら、早く行けって‼俺ももう帰るから」


「うん……っ」



最後の最後まで、笑ってくれている尊琉君。


背中をポンと押してくれる姿がまるで涙を隠すように見えて、私はすぐに家を出て走り出した。






――尊琉君。


初めて付き合った人。


私たちの間に何もなかったけど、あなたにはとても救われました。


尊琉君に言われたこと、ちゃんと守るからね。



自分の気持ち、大切にする。



――ありがとう……







思いっきり声にだして泣きたいけど、今はそれどころじゃない。


私にはやるべきことがある。



家からしばらく走った所でスマホを取り出し、彩葉に電話をかけた。



お願い彩葉……出て。



私もう二度と嘘はつかないから。

矛盾してたけど、これが私のこたえだから。


もう何があっても、変わったりしないから――





『もしもし』


「彩葉!?」



よかった、出てくれた……



私は深呼吸を繰り返して緊張を抑えた。



「ゴメンね、彩葉。遅くなってゴメン……。本当は全部彩葉たちが言った通りだった。自分の気持ち押し殺してただけだった。
……私は魁が好き。だから魁を放っとけない‼」



今更だって思うのは当然だとわかってる。


けどお願い、伝わって……





『……よかった。やっと桜綾らしくなったね』




しばらくして、電話の向こうから聞こえたのは優しい声で、ホッとした。



『ちゃんと伝えたの?』


「うん。尊琉君も気づいてたみたいで、背中押してくれたの。裏切らないためにも、私ももう嘘つかない」


『そっか。ならよかった……』



数時間前とは違う、彩葉の落ち着いた声。


もしかして、魁見つかったの?



「それで、魁は!?」



でも、彩葉の声は聞こえてこない。



「彩葉……?」


『見つかってないの』

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