クールな社長の溺愛宣言!?
「なんのことでしょうか?」

 強く出られるとなにも返せなかった一年半前の私とは違う。素知らぬ顔でとぼけてみようとしたけれど、どうもそれが却(かえ)ってまずかったようだ。

「生贄は生贄らしく、さっさと檻の中に戻って来い!」

「はいっ!」

 久々の雷に、私の背筋がシャンと伸びた。社長は一喝すると、さっさと来た道を戻って社長室に向かって歩き始める。

 ――どこかに向かうのでなければ、わざわざ私を探しに?

 まさか、そんなことあるわけない。

 私はいつものごとく競歩さながらのスピードで社長の後を追いかけ、息を切らしながらもそんなことを考えていた。

 社長室に戻り、自分のデスクで仕事を片づけ始める。離席中に新しく置かれた書類にさっと目を通し、今日の退社時刻が一時間は延びたことを確信した。

「ん……?」

 ふと顔を上げると、デスクの前に社長が突っ立って、私を見下ろしていた。

「あの……なにか?」

 普段ならデスクに座ったまま、こちらを見ようともせずに指示を出すのに、今日は珍しく私のデスクの前まで来ている。いつも鋭い眼差しだけれど、今日は一段とその鋭さが増しているように感じた。

「行くのか?」

「はい……?」

 突然のことに訳がわからなくて、間の抜けた返事をしてしまう。
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