きみを見ていた
・・前日、放課後・・
教室の掃除も終わったし、やっぱ補習行かなきゃダメかなぁ。
ホームルーム終える時やあいさつ後も磐座先生、特に何も言ってなかったけど。
音楽の授業ではちょっと厳しいのかな?って思ったけど、クラスに戻ったらすごく明るくて楽しい先生。
赴任して間もないし忙しいだろうから、補習の事も忘れてるかも?
だったらいいな~!
でも、念のため行ってみるか。
それで、磐座先生がいなければ万々歳なんだから。
ふふふ...
帰り支度をして、私は渡り廊下を通り音楽室へと向かった。
「ポロン ポロン」と時おりピアノの音と
「アハハ」「フフフ」という大げさでない笑い声が聞こえる。
「あれ、補習って私だけじゃないんだ。
何人くらいいるのかな?」
そっと、音楽室の後方の戸を開けると、
ざっと15-16人くらいの生徒がいて驚いた。
机といすは全部後ろに下げてあり、
正面左側のグランドピアノに座る磐座先生を囲んでいた。
「遅いぞ、山田。
さ、これで全員集まったな。
はじめよう」
「はい」
心地よい低音からのアルペジオの連続。
各々が体を軽く動かしながら教室の空いてるスペースへと散らばる。
「まずはストレッチから」
メガネの男子が声をかける。
あ..瀬戸先輩
という事は...
先輩の動作をまねて皆、肩や肘、腰やアキレス腱を呼吸を整えながらじっくり伸ばしていく。
「ハミングから」
磐座先生の声。
皆、口を軽く閉じ鼻孔を開きながら「m...」と始める。
そこまでカバンを持ったまま眺めていた私は、一礼し踵を返すと教室を出た。