Android



――…


「ユイ!!終わったのね?!」


結斗がまず訪れたのは両親の部屋だった。

扉を開けた瞬間、母が瞳を輝かせながら走り寄ってきた。


「時間かかっちゃったけど、中々な出来でしょ?」


そう言って結斗は、ガラスケースを母に渡す。

それを見た母は感動に満ちた微笑みを見せる。


「まぁ!なんて素敵な人形なのかしら!!」


遠くで見ていた父も、側へやってきて、それをまじまじと見た。


「ほぉ。たいしたものだな。
これは二つで一つ…という事か?」


「そう。恋人なんだ。
だから二人で一つ。離しちゃだめだよ?」


そう言った結斗の言葉にふいに大人の一面を見た。

きっと、フランスで素敵な恋人がいたのだろうと

父母は顔を見合わせた。


「そうだ、ユイ。二時に来客の予定が入ってる。
仕事が片付いたなら行きなさい」


「わかった。二時だね」


時計の針は十二時三十分を刺している。

まだ少し時間があるので、結斗は自室で休む事にした。


「お疲れ様、ユイ」


アリアが用意してくれた紅茶を飲みながら

しばしの休憩。

今度はどんな依頼だろうとか

考えてみたが

出てくる結論、たどり着く意思は一つだけだった。


どんな仕事でも、当たり前にこなして行く。

「マスター」として、堂々としている。


本当の自分の心の中を

誰にも悟られないように―…。
< 15 / 62 >

この作品をシェア

pagetop