Android
『人形を創るから、来客が来たら対応しておいてね』
早朝、そう伝えてから
結斗は一歩も部屋から出てこなかった。
帰国後、初めての『魔力人形』創りなだけあって
両親も屋敷の者も、皆興味津々といった様子だった。
人形の外装は、やはり創る者のセンスと言ったものだろうか。
最も、アリアを見れば、彼のセンスを疑う者は誰一人いないだろうが。
太陽も真上に昇った午後。
ようやく結斗が出てきた。
「遅かったな結斗。
人形一つ創るのにそんな時間かかんのかよ」
最初に声をかけたのは
同じ「マスター」候補だったトオルだった。
「こんなヤツがマスターだなんて、ホントあきれるぜ」
「久しぶり、トオル。僕に何か用だった?」
「お前の仕事振りを見に来たに決まってんじゃん。
でもまさかこんな出来損ないだったなんてな」
自分が選ばれなかった悔しさから
皮肉を言ってるとしか思えない彼の言動。
結斗は彼を相手にする素振りもなく
彼の横を通りすぎた。
その直後、一言だけ言った。
「待たせて悪かったね。
一度に二体を創るのに
少し時間かかっちゃってさ」
「!!」
結斗が手にしていたガラスケースの中には
仲良く手を繋いだ少年少女の人形が入っていた。
結斗が人形を創ると言って
部屋に籠もってから六時間半経っていた。
だが、通常一体の人形を創るの為に
費やす時間こそが六時間程なのだ。
一体の人形を創るその時間の中で
彼は二体も創っていたと言うことになる。
「…っ!!!!」
見せ付けられた技術の前に
自分が並べた皮肉の言葉が
逆に自分自身を惨めにさせた。
遠ざかる結斗の背中を追う事も出来ず
トオルはその場に立ち尽くしていた。