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意識=静止



その衝撃は訪れなかった。


「…?」


うっすらと目を開けてみると

刃は下ろされる寸前で止まっている。


「リア…?」


彼女の細い腕は微かに震えていた。

その刃を力なく地に落とす。

虚ろな瞳は一点だけを見つめている。

その青い瞳から、一筋の涙が流れた。


「リア、何をしてんだ?早くユイを殺せ!」


ジンが叫ぶ。

しかしその声すら届いていないかのように

リアは結斗を見下ろし、涙を流し続ける。


「リア、僕が解るの?」


結斗の問いかけにリアは答える事はなかったが

その行動が何よりの証だった。

「屍人形」でしかないリアが

命令に背き結斗を殺さなかった。


「リア…俺に逆らうのカ…!
お前は俺に生かされテいるノニ!!」


「ジン、もういいだろう?
リアを土に還してやってくれ。
こんな彼女の姿は、もう見たくない!」


地に足を着きながら

必死に叫び言い聞かせる結斗。

背後には自我を失ったアリアが

未だ鎖で身体を縛り付けている。

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