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賭け・雪・空へ…

(ユイ…ジン…)


「?!」


それは、どこからともなく聴こえてきた。

そう。鼓膜に直接響いてくるような感覚…。


「ユイ、お前の人形か?」


「いや…そんなはずはない…」


アリアの方を見やると

アリアは膝を突いて完全に停止していた。

その状態で会話など…できるはずがない。
















(ユイ…ジン…)














確かに聴こえる声。


(ごめんなさい、私の所為で、二人を傷付けてしまった…)




包み込まれるような高い声。

やわらかな物言い。

これは間違いなく「リア」だった。


「まさか…アリアの中で…?」


先程からジンの命令とは

無関係に動いていた「リア」が

また動き出す。

それと同時に聴こえてくる声。


「リアは…、自分の意志で動いているというのか…?」


同様を隠せない二人に、「声」は告げる。


(ごめんなさい、ユイ。
貴方のアンドロイドを
乗っ取るような形になってしまって…)


「そうか。
ジンによって壊された場所は
「生命プラグ」だったんだ。
意識をなくしたアリアの中で
リアは僕達に話しかけているんだ。
「肉体」で自分を表現しながら」


結斗はゆっくりと立ち上がった。

覚束無い結斗に、そっと肩を貸すジン。


(二人には、ずっと親友で居て欲しい…。
私がそれを…壊してしまったかもしれないけど…)


「リア、ごめん。
僕達はずっと君を苦しめていたね。
散々弄んでいたね」


(ユイ、それは違う。
私が貴方の人形になる事を望んだんだから)


「だけど、それを口実に
僕は君をこんな小さな場所に押し込めていた…。

もう、苦しめたくない。
決めたんだ。君を解放するって」


(でも、私は貴方の傍にいたいわ。
アンドロイドとしてでも
たとえ私の「意志」が消えても
私は貴方の傍に居たいわ)


二人の会話を黙ってきいているジン。

間に入り込む事など出来なかった。


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