とあるレンジャーの休日

 初診の患者というのは、診察にも時間がかかるのが常だ。
 いつからどういった症状があり、本人はどうして欲しいのか――薬が欲しいのか、詳しく検査して欲しいのか、話を聞きながら判断する。
 当然、話の早い人とそうでない人がいるが、それもまた善し悪しだ。
 患者の話は、聞き過ぎても聞かなすぎても良くない。
 こちらが診断をするのに必要な情報を充分に引き出しつつ、無駄な話は上手く流すということを繰り返していく。

 だから、初診と再診であれば、初診のほうが圧倒的に時間がかかるし、神経も使うのだ。

 いつもより一時間近く長引いた診療を終え、紫乃はホッと息を吐いた。
 時計を見ながらソワソワしている山城を先に帰し、カルテの整理と会計の締め処理をする。

 すると、しんと静まりかえった診療所に、自宅に通じるドアが開く音が響いた。
――遠慮がちな開き方と、慎重な足音。
 紫乃はすぐにピンときて、廊下側のドアを開く。

「やっぱり。歩だ」

「紫乃。もう終わった?」

 もの珍しそうに、あちこちを眺める彼を見ていたら、紫乃の口元には自然と笑みが浮かぶ。

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