とあるレンジャーの休日
「まだ検体の回収が終わってないんだ。業者が来るまで、もう少し待ってくれる?」
歩は「ふーん」と呟きながら、彼女に招かれるまま、診察室の中に入った。
「白衣着てると、やっぱりお医者さんだね、紫乃」
「やっぱりって何」
「だって俺、初日の医務室でしか、その格好見てないから」
紫乃はふっと笑い、片付けが済んでいるのを再度確認しながら見て回った。
その後を、歩も一緒についてくる。
「古いけど落ち着いてて、いい雰囲気の診療所だね」
「それ、おじいちゃんに言ってあげて。きっと喜ぶよ」
「じいちゃんが?」
「うん。ここは、おじいちゃんのお城だから」
――お城なのか、それとも戦場か。
いずれにしろ、ここには清二郎の生き様がそのまま刻まれている。
歩が何かを言いかけた時、診療所の入口扉が開き、検体を回収しに来た業者の若い男性が顔を出した。