とあるレンジャーの休日

「うわーっ、今の、あとちょっとだったのに!」

 何度目かに落ちてきた歩が、口惜しそうに喚いて頭を抱えた。
 それを見ていたトレーナーたちが、口々に彼を慰める。

「いや~、すごいすごい!」

「うん。今でも上位で戦えるよ。競技に出てみたら?」

 元々人懐っこい歩は、あっという間に彼らと仲良くなってしまい、デートそっちのけで壁登りに夢中だ。

 でも紫乃は、そんな彼の様子を見ているだけで、十分楽しかった。

(動いてる歩を見るのって、ほんと眼福……)

 ジムの利用料金は一律で、特に時間で制限されているわけではない。
 何時間も立て続けにトライし続けられる人はいないから、それでも問題ないのだろう。

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