とあるレンジャーの休日
嵐の前の静けさ

24

 
 後ろ手に閉めたドアのノブが、カチャンと音を立てて閉まった。
 歩はそれを聞き届けてから、「ハァ〜」と大きなため息を漏らす。

(なんだよ、あの顔……)

 不意打ちの後に、もう一度ねだったキスを、紫乃は柔らかく受け止めてくれた。
 しかも優しく微笑み、頬にお返しの口づけまで。

 歩は、多分そうだろうとは思いつつ、確信が持てずにいた紫乃の気持ち――彼女も自分のことを想ってくれていること――を初めて実感し、嬉しさのあまり猛烈にダッシュして駆け回りたくなった。

 落ち着こうと顔を上げれば、目の前には紫乃が寝ていたベッド。
 ここを使っていいと、彼女は言っていたが……

(絶対眠れねえ)

 部屋に入っただけで漂うほのかな香り。
 普段は、抱きしめられるくらい近くに寄った時だけ感じる香りが、ここにいるだけで歩の鼻をくすぐる。

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