とあるレンジャーの休日
戦う理由

07

 
 紫乃は、歩が何も言わずに飛び出して行ったドアを見つめ、ポカンとしていた。

(どうしたんだろう……?)

 トイレでも我慢していたのかもしれないと思い、彼女はそれ以上深く考えるのを止めた。

 さっさと立ち上がって自分の部屋に戻り、着替えをして階下に向かう。

 まずは四人分の朝食の支度。
 そして診療所を開ける前に、24時間開いているスーパーへ行き、食材の買い出し。
 掃除に洗濯。
 やることは山ほどあった。

 一方、歩はしばらくの間お休みだ。

 彼はこちらの駐屯地にいながらも、任務は与えられないという、出張に近い扱いになっている。
 彼の上官と塚本の采配により、通常勤務のルーチンからは外されていた。

 心身の不調が表沙汰になることで、彼の職歴に余計な傷が付かないよう、配慮されている。
 不調の原因が、肉親の事故という特殊な事情であることも、理由の一つだろう。
 だが、なによりも――

< 76 / 317 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop