シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~
「多分、遥人が思うほど、わたしは弱くないよ」
「ああ」
「それにね、もっと強くなる。みんなと知り合えたんだもの」

 遥人が少し驚いた顔を見せた。

「この部に入ってよかったって思ってる。何の楽器もできないけど」
「今どき、楽器ができなくても、全部打ち込みでも曲は作れる」
「うん。航は中学時代には一人でやってたみたい」
「そうなのか」

 つい口が滑った。この時点では得ていないはずの知識を披露してしまった。
 おちゃらけているくせに自分の能力をひけらかすのは嫌う航が、打ち込みで作った音源をわたしたちに聴かせてくれるのは、大学に入った後、デビューを打診されてからのことだ。
 うっかりしていた。一度発してしまった言葉は取り戻せない。
 どうにか別の方向に話題を持っていくしかない。

「シンセ中心の音でも、ドラムスとベースが生音だったら迫力が違うよね」
「何が言いたい? ……玉川と青島と組めって言うのか」
「そういうのはわたしが強制することじゃないけど……」
「俺は、本気で音楽をやろうとしている人間となら、一緒に組んでもいいと思ったけどな」
「ほんとに?」

 遥人から言い出してくれるなんて予想外だ。
 前回は航が亜依と遥人を誘い、リーダー役を遥人に頼む形だったけれど、今回は遥人自らバンドを組んでもいいと言ってくれた。

「ソロにこだわりがあるわけじゃない」

 ぶっきらぼうに言うと、遥人は校舎の方へ歩き出した。

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