シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~
「じゃ、遥人が好み?」
「ハル? まさか! あいつ何考えてんだかさっぱり謎。もしかしてうちのこと見下してるのかなと思うときもある」
「そんなことないよ。遥人はそんなひとじゃない」
「きっぱり言い切るねえ。根拠あるの?」
「それは……」

 後の三人を知っていたらわかる。
 遥人は亜依を尊敬しているはずだ。ドラマーとして、コンポーザーとして。
 二人で共作した曲もある。
 だから今、亜依が遥人とではなく、別のひとたちと音楽をやろうとしているのが不思議だった。
 わたしは浮かんだ疑問をそのまま口にした。

「どうして先輩たちと組んでるわけ?」
「え? だって誘われたから」
「コピーバンドをやりたかったの?」
「いい曲だったら素直にいいと思うじゃん」
「せっかくの合宿なんだから、いつだってできる曲じゃなくて、オリジナルをやればいいのに。三日間あれば、一曲作れるんじゃない?」

 亜依の表情がくもる。
 鼻の上にしわが寄り、唇がとがる。
 あ、言い過ぎた。そう思ったけれど、一度発した言葉は元に戻せない。
 目に見えて不機嫌になった亜依が、スティックをくるくると回して言い捨てた。

「そう言う未波は? 黙って遠くから見てるだけ? 何かをしたいって、自分から言うこともないし、誰かに近づくこともない」
「……それは」
「楽器はできないし、喉が弱いから歌も無理、だよね。知ってる。見てるだけでも別にそれはいい。できないのか、やらないのか、どっちでも周りにとっては同じだから。でも、あんたがその流儀を貫くなら、うちの選択にも口出さないで」
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