シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~
「てっきりあんたは休みだと思った。この暑い中、わざわざ学校来るなんて、雪でも降るかね?」
「体調もよかったし……降るわけないし。職員室で衛藤先生と話してきたんだけど、この三日間で何か一曲仕上げるの?」
「そうそう。うちは先輩んとこ入れてもらって、ミスチル練習してる」
「え? ミスチルのカバー?」
「うん。まぁ、うちがイケメンじゃないのが残念だけど」
「そもそも女でしょ」

 亜依がうらめしそうにわたしを見た。
 日に焼けた顔。引き締まった手足。
 筋トレを積んで、腹筋を六つに割っても、性別までは変えられない。
 クラスの中でわたしがなめられずに済んでいたのは、亜依と仲がいいおかげだった。
 どんなに派手な子たちも、無尽蔵の体力を持つ亜依をからかったりできなかったのだ。
 運動ならほとんどの種目でいい成績を出す亜依。どうして音楽なんかやってるんだ、と運動部の連中がくやしがるほどだったから。

「亜依が男だったら、わたし、つき合ってたなぁ」
「え、ちょっとちょっと、選択権はそっちにあるわけ?」
「駄目なの?」
「駄目とかじゃないけど……一応、うちにも選ぶ権利をくれていいと思うんだ。うん」
「じゃ、亜依の好みのタイプって?」
「内緒」
「航とか……どう?」
「えー、やだよ。あいつ、口うるさいもん」

 未来ではいいコンビになってるんですけど。
 亜依と航のマシンガントークは、ライブMCの目玉のひとつだ。
< 42 / 206 >

この作品をシェア

pagetop