シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~
 こうしちゃいられない。
 わたしは部室を出て、トライクロマティックの三人目を探しにいくことにした。
 校舎に入り、教室をひとつひとつ見て回る。
 しんと静まった空間に、わたしの呼吸と足音だけが響く。
 生徒の気配がない学校は、昼間でも少し怖い。
 無人の教室に慣れると、不意に人影を見つけて、それもまた驚かされる。
 LL教室には軽音部の先輩がいて、ヘッドフォンをつけて何か聞いていた。目をつぶっているから、わたしの存在にも気づかなかったようだ。
 自分のクラスを通りがかると、さっきと同じように航がいて、キーボードを鳴らしてはフレーズを口ずさみ、机に向かって何か書きつけていた。
 まだ幼い、でもやっぱりいい声だ。さわやかなのに、明るいだけじゃない声。
 聞いたことのない曲だったから、その後、お蔵入りになるのかもしれない。
 邪魔をしないよう、声をかけずに、そっと離れた。
 理科棟と呼ばれる校舎で、男子の制服の影が廊下の端をよぎった。
 遥人かもしれない。

「待って」

 声をかけると、足音が止まった。
 心臓が痛いくらいどきどきと鳴る。

「……何?」

 廊下の曲がり角から顔を出した男子生徒は、遥人ではなかった。
 手に星座早見表を持っている。

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