シークレット・サマー ~この世界に君がいるから~
「あ、ありがとう」
「……変なやつ」

 ですよね。
 わたしもそう思います。自分は変だって。
 何しろ八年後の未来から来ているんだから、不自然極まりない。
 だけど。

「遥人も変わってる。軽音部の合宿なのに、泳いでるなんて」
「ミュージシャンはアスリートと同じだ。身体作りは基本」
「そうなの?」
「玉川はグラウンド走ってたぞ。この暑い中」
「亜依が? いつ?」
「今朝早く」

 まあ、体力馬鹿の亜依なら、不思議ではない。真夏のグラウンドを五周くらい、ウォーミングアップだと言って軽々と走りそうだ。

「遥人もその場にいたんだ?」
「通りがかった」
「身体作りするなら、一緒に走ればよかったのに」

 遥人は無言のまま、ストレッチを始める。
 余計なことを言ってしまったみたい。でもこの場から離れられない。
 濡れた身体は日差しを浴びて、あっという間に渇いたようだ。ただ床だけが、遥人がかかとをついた場所だけ水を含んで色を変えている。
 十四歳のまぶしい肉体を間近で見せられ、どぎまぎした。お金を払わなきゃいけないんじゃ、なんて考えが浮かぶのは二十二歳のわたしのしわざ。
 あわてて話題を変えた。
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