思い出の木
留学
専門学校に入学する前の春休み
私は棗によばれて棗とあの木を見に行った。

まだ桜は咲いてなく静かにそびえ立っていた。

あ、そうだ棗から話があるって言ったよね?
話って何?

あのさ、俺と別れて欲しい。

え?どうして?やだ!

俺、フランスに留学することになったんだ。
だから奈桜と会えなくなる。
奈桜に寂しい思いさせたくないから
別れてほしい。

私は寂しくなんかない!棗と別れなきゃいけないのの方がさみしいよ!!
帰ってくるまで待ってるから。
別れないで欲しい。
お願い。お願い。

フランスに行ったら連絡も取れないし、
会うことも出来ない。
俺、5年留学することになったから
若しかしたらあっちの企業に就職することになるかもしれない。
そうなったらただ、奈桜に辛い思いさせるだけになってしまうから。ほんとにごめん。

私、待ってるから。
棗の事ずっと待ってるから。

棗は黙って顔を下げた。
少しして顔を上げて

…わかった。俺も向こうで頑張るから、待ってて。絶対帰ってくる。
もう、明日旅立つんだ。

そんな急に…

打ち明けるのが辛くてずっと言えなかったんだ。ごめんな。

大丈夫。絶対待ってるから
行ってらっしゃい。

おう。行ってくるな。
またな。
棗は優しく微笑んだ

私の大好きな笑顔。
こうして棗はフランスへ旅立って行った。

でも、これは私に向けた棗からの最後の笑顔になった。
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