ネガイボシ
「どうしたの!?」


何か古い本を読んでいた雅樹が、ばっと顔を上げた。

ページの端が茶色く変色したその本を私に向けて、必死に1ヶ所を指している。


「この昔話っ!
本当のことかはわかんないけど、本当なら、七夜伝説の原因はコレで決まりだ」


私は、急いで雅樹の手元を覗き込んだ。

そこには、もう何百年も前にこの土地に住んでいた夫婦の話が書いてある。


原文がかなり古いものだったらしい。

本にはパソコンで打ったような均一な文字が並んでるけど、文章自体は仮名遣いも文法も古文そのものだ。


私は、簡単に訳しながらゆっくりと読んだ。


「『私の妻のななよは、幼い頃から体が強い方ではありませんでした。
故に、私の両親は、ななよとの結婚を渋っていましたが、昔からの縁もありましたし、説得の末、私たちは結ばれました。

ななよとの生活はとても楽しく、大変幸せなものでした。
また、嬉しいことに、結婚後、ななよの体調も安定していました。

しかし、そんな生活もあまり長くは続かなかったのです。

悲しいことですが、仕方がありませんでした。
私に、兵役の知らせが来たのです。
この土地からはだいぶ離れた南の町で、3年間勤めよとのことでした。

勤め初めてから2年程、私たちは頻繁に文のやりとりをしていました。
しかし、その後はぱたりと文が来なくなったのです。私が何を書いても、返事は一切届きませんでした。』」

「次のページから続きがあるんだよ」


見開き分の話を読み終わった私に、雅樹がそう声をかけた。
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