ネガイボシ

「『後から聞いた話によると、ななよは病に侵されていたらしいのです。
私宛ての文には書いてありませんでしたが、私が兵役に就いてから約1年後からだったと聞きました。

私が戻る半年前に亡くなったななよには、大変寂しい思いをさせていたようです。

ななよの机の引き出しには、私の傍にいたい、と書いた文が何枚も入っていました。
きっと出したくても出せなかったのでしょう。

私はそれを見て、大変悲しくなり、泣き崩れました。』」


私は、思わず言葉をつまらせた。


私が口を閉ざしたのを見て、雅樹が代わりに話を繋いだ。


「『私は、悲しみをこらえて立ち上がりました。
聞いた話によりますと、まだななよの墓はないらしいのです。

そこで、私は一掴みの骨と、ななよが好きだった髪飾りを持って、山に上りました。

ななよは一足先に、空へと旅立ったのです。
だから私は、空に1番近い場所にななよの墓を作りました。
そして、髪飾りを、私が肌身放さず持っていた小物入れに入れて、そこに置きました。

傍にいたいのは、私も同じなのです。

私は日が暮れるまでそこにおりました。
そして最後に、ななよを思いながら七つ星の形を墓石に刻みました。

その日、夜空を見上げると一際目立つ星々がありました。数を数えると、それは私が墓に描いた形と似ていました。
私はそれを、ななよが喜んでくれた証のように感じたのです。』

この人は、それから5年くらいで亡くなったらしい。
しかも、この出来事の後に独り言が増えたっていう記憶がある。
兵役3年ってことはかなり昔のことなんだろうけど……」
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