君が涙を忘れる日まで。
修司の席は、窓から二列目の前から二番目。その右隣は、香乃。

私の席は、窓際のうしろから二番目。


ひとつずつ席を辿りながら自分の机に手を置いた私は、そのまま椅子に座った。


「電気をつけなくても、晴れてれば充分明るいんだね」

窓から差し込む太陽の光が、教室の中を照らす。


「そうだな」

教壇に立っている幸野君が、眩しそうに目を細めて外を見つめた。



「この席に座っているとね、二人の姿がよく見えるんだ」


好きな人の背中を見ていたいから、修司よりもうしろの席に座りたいと思い続けていた。

でもそれが今になって叶うなんて、本当に残酷だ。



「ちなみにさ、俺の席覚えてる?」

「え?あ、っと……廊下側、だったような」

「すげー曖昧じゃん。まぁ、俺の席を覚えてる余裕なんかなかったか」

「ごめん、そういうんじゃないけど」


少し困って俯くと、幸野君は教壇を降りて自分の席に座った。


「ここだよ」


廊下側のうしろから二番目。丁度私と同じ横の列だった。



「それはいいとして……、迷子になっちゃった樋口の気持はどこいったんだ?」

「え?」


「確かに、周りから見れば仲の良い三人に戻れたって感じだけどさ、お前の気持はどうしたんだよ」


机に肘を付きながら、私を見つめる幸野君。


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