危険地帯
私だったら自分の過去の話を、雫さんみたいに笑って話せない。
ううん、話そうとさえしない。
すごいな、雫さん。
「あ、あの、雫さん」
「どうしたの?羽留ちゃん」
私も、雫さんみたいに強くなりたい。
どんなに暗い過去だって、笑顔で話せるような人になりたい。
どうしたら、そんな風になれるんだろう。
「私、自分が存在してる意味がわからなくて……」
耳をかすめる、忘れられない遠い昔の“声”。
その“声”は、私の存在を否定する。
私はどうして生きているの?
「そんなのわからなくていいのよ」
「え?」
「これから見つけていけばいいの」
雫さんの澄んだ瞳が、私の心を撫でているかのようだった。
なんて単純で素敵な答えなんだろう。