危険地帯
「雫も、羽留ちゃんと同じだったんだ」
「私と、同じ……?」
博さんは焼きあがったパウンドケーキをオーブンから取り出しながら、私に言った。
「雫にも生きている意味がわからない時期があったんだ。でも、好きな人や仲間ができて変わったんだ」
雫さんにも、私と同じようなことを考えている時があったんだ。
私も、雫さんみたいに変われるのかな。
……変わりたいな。
「はい、サービスだよ」
「わあ!ありがとうございます、博さん」
博さんは私のためにココアパウンドケーキを作ってくれていた。
一口食べるだけで幸せになるスイーツ。
悪夢のような現実さえも一瞬で消してくれそうなくらい、美味しかった。