危険地帯



深月が心配してくれた理由を探して、勝手に思い込む。


誰かの優しさに触れただけなのに、こんなにも嬉しくなる。


まるで、名前のない魔法にかかってしまったみたいに。






時間は過ぎ、日が暮れてきた頃。


昼食を食べてから、深月と律の遊び道具がオセロからチェスに変わった。


私はチェスのルールがよくわからないので、二人の対戦を静かに見ていた。



「チェックメイト」


「くっそおお!」



今のところ、深月の全敗。


何度やっても律に勝てない深月に、律はドヤ顔をする。


深月は、勝負をなかったことにするように駒をぐちゃぐちゃにして、



「もう、やめだやめ!」



と投げやりに言うと、ソファから立ち上がった。


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