危険地帯
「どっか行くの~?」
「繁華街らへんで暴れてぇ気分なんだ」
「僕に散々負けたから?」
「……っ!」
「ははっ、図星なんでしょー」
律は、負けず嫌いらしい深月をからかいながら、床に落ちた駒を拾ってから立ち上がった。
暴れるって、喧嘩するってこと、だよね?
こういう時なんて言えば、彼らは喧嘩をしないんだろう。
「羽留、行くぞ」
「あ、うん」
いくら考えても、喧嘩を止める言葉が思いつかなくて。
返事をした声が、思ってたよりも小さくなってしまった。
地下から出ると、四方八方から蝉の合唱が聞こえてきた。
暑苦しい気候に、一適の汗が流れる。