危険地帯
「話聞いてた?」
「聞いてたよ」
全部聞いたからこそ、わかったんだよ。
律の本当の気持ちに気づけたんだよ。
「僕がすごいとか優しいとか、わかりやすい嘘つかないでくれる~?」
「嘘じゃないよ」
「本当は嘘なんでしょ~?」
「嘘じゃないって」
ましてや、お世辞でも冗談でもない。
やっと見つけたんだ。律の心に隠れた優しさを。
博さんの助言通りに向き合ったら、三人の優しさに触れることができた。
遠くからでは決して見えない、けれど確かに在る温かさ。
孤独を知ってる私だからこそ手を伸ばせる場所に潜んでいた“光”は、深月や司だけじゃなく、律にもあったんだね。