危険地帯
どうしてそんなに辛い過去を、私なんかに話してくれたのかはわからない。
それでも、律が私に寄り添おうとしてくれている気がした。
たとえそれが、私の勘違いだとしても、そう思いたかった。
「……すごいね」
「でっしょー?僕の過去、すごいよねぇ」
「違う」
そうじゃない。
過去がすごいとか、そんなことを言っているんじゃない。
自分の過去を話したというのに、律は顔色一つ変えていなかった。
そのことが、逆に傷ついているように見えて、胸が痛くなる。
「律がすごいなって、優しいなって、思ったの」
「はあ?」
潤んだ瞳に、律が映る。
律は、意味わからなそうに眉を寄せた。