危険地帯
律が本気で女を追い払おうとしたら、きっと女は顔を青くして去っていくはず。
いつも私に向ける鋭い視線は、それくらい怖いものだからわかるよ。
なんでそんな嘘をつくの?
「あんたに僕の何がわかるの?」
「っ、」
ほら、その目。
禍々しくて冷たい、黒に近いグレーの瞳。
怖い……けど、ここで逃げてしまったら今までと同じだ。
「他人にとやかく言われたくないんだけど」
「た、他人だからこそわかることだって、あ、る……と思い、ます」
私は怖気づいている心を抑えながらそう反論するが、語尾が消えかけてしまった。
「私だったら、女に話しかけられても無視するし、もう二度と近寄ってこないように酷い態度を取ってしまう」
きっと、それが普通だ。
嫌いな人と仲良くするなんて、できない。