危険地帯
もう、律が怖いなんて思わない。
怖そうなだけで、本当は優しい人だと知ってしまったから。
律の手の温もりを感じてしまったから。
後戻りはしないよ。
「ありがとう、羽留」
深月も司も律も、本当はあったかい人。
そのことに気付けて、よかった。
すると、律に私の目を、私の頬に添えていた右手で覆われた。
急に真っ暗になった視界。
「え?り、律??」
戸惑う私の唇を、何かがふわりとかすめた。
触れたか触れていないかわからないくらい、一瞬の出来事だった。
「……伝わったよ」
私の目を隠していた律の手が離れていく。
律が小さく呟いた声が、私に届くことはなかった。
明るくなった視界に映った律の顔は、ほんのちょっとだけ赤らんでいた。