危険地帯
私は、かかっていた真っ白な布団を、お父さんに投げつけた。
ベットから降りて、まだ少しふらつく足で立った。
布団だけでなく、枕もお父さんにぶつけた。
……違う、違う!
やっぱりお父さんは、私が家を飛び出したあの日から、何も変わってない。
お父さんは何も、わかってない。
私が家に帰らない理由は、何だと思ってたの?
お父さんが私を信じる根拠は、一体何なの?
そう問いかけても、どうせ答えられないんでしょ?
待っているだけなんて、ずるい。
私が、どんな思いをしていたかも知らないくせに。
今まで私が自分の感情を押し殺して笑っていたことも、知らないくせに。
「羽留……?」
「泣かなかったんじゃない」
目を見開いて、いきなりの私の行動に驚いているお父さん。
私は、どんなことがあっても泣かないような強い子じゃないよ。
涙はどんどん溢れてくるのに、こぼれ落ちたりはしない。