危険地帯




お母さんとお父さんも、もしかしたらわかり合おうとして喧嘩をしていたのかもしれない。


受け入れようとしなかったのは、私だ。


私は塞ぎ込んで、何もわかろうとしなかった。



「司、あと何分だ?」


「あと、30秒だ」



深月が尋ねると、司は手首につけている時計を見て、そう答えた。


三人の顔つきは、どう見ても、殺られてるだけの人が見せる表情ではなかった。



「何を企んでやがる」


「さあね~」



ナイフを持っていない手でドクロのピアスをいじる忍者は、若干動揺していた。


律はゆるい口調でとぼけたことを言って、ベーっと舌を出す。




「なあ、羽留。闘ってもいいか?」




また、あの音が耳の奥で流れる。


――カチ、カチ。


幻聴が、聞こえる。


時計の針が、動く音。



< 418 / 497 >

この作品をシェア

pagetop