世界が終わる音を聴いた



この世から去る、数ある魂をあるべき場所に送ること。

それが自分に与えられた仕事だった。
仕事といっても特に誰かから報奨が貰えるわけでもない上に、休みもあるわけではなく、おまけにいうならこの仕事に終わりは見えない。
この命はとうの昔に失われているのだから。

死神か?と問われれば、それは否。
神などという存在ではなく、与えられた仕事をこなしているにすぎない。
いつからそんな仕事をしているのか?と問われれば、自分に“生”がなくなってから、すぐに、だ。
誰から与えられたのかと問われれば……それは、自分でもよくわからない。
あえて言うならば、自然の流れだった。


命の巡りは決まっている。
世界に命を受ける日、去っていく日はよほどの事がない限り決まっていて、その中でそれぞれの命を生きていく。
生きるという役目を終えたモノは、器と魂と霊体とが分かれ、それぞれに必要な場所へと還っていく。
それを司るものをあるいは“神”と呼ぶのかもしれないが、それならばつまり、神は自分自身なのかもしれない。
本物の“神”とやらが、何処かにいるのかもしれないが、今のところ俺自身はその存在を感じたことはない。



< 122 / 149 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop