忘れたはずの恋
「吉永さん、ちょっと」

それは4月下旬、突然の事だった。
総務部長と共に局長室に向かった。

…異動だな。

前から人事異動の対話はあった。
私もこの局に来て5年が経ち、役職もこの4月で上がったのでそろそろだろうと思っていた。

「集配営業部への異動を…」

えっ?
今、何て?

「計画課長が同時に他局に異動になります。
が、代わりは来ません」

計画とは主に事務担当だけど、私が課長の代わり?

「そんなに不安な顔をしなくても大丈夫です。
総括課長がいるので胸を借りて頑張ってください」

総務部長までそんな事を…。
無理ですよ、私。
畑違いも甚だしい。



落胆したまま私は内示が終わると、車両の書類を持って集配に行った。

今日は月曜で物数が多いので午後2時半を過ぎてもほとんどの人が出られない状態だった。

「相馬課長、書類をお渡ししておきます」

外務の課長にそう声を掛けるとムードメーカー的な相馬課長は笑って

「GW明けからヨロシク!」

…情報、早いな。

たまたま指定の書留を課長席まで取りに来ていた3班班長の三木さんが

「えっ、何、異動?」

私と相馬課長の間に入ってきた。

「そう、GW明けから計画だよ」

三木さんは嬉しそうに

「吉永さんが来てくれたら少しはスムーズになるかもね」

…いや、そんな期待は止めてください。
私、全然集配の事なんて知らないし。

「また宜しくね」

三木さんは笑って班に戻って行った。

その時、一瞬だけ藤野君と目が合ったけど。

そうか、彼とも一緒の部になるんだ。

なんてくだらない事を考えながら総務に戻った。
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