忘れたはずの恋
「…というわけ」

元カレとの経緯を30分くらい掛けて藤野君に話をした。
途中、何度も詰まってしまって申し訳ない。
あんなに酷いことをされても、やっぱり大好きだったから。
色々と思い出してしまう。

「やっぱり別れて正解ですよ」

ずっと聞く事に徹していた藤野君が口を開いた。

「そういう人は結婚してもまた繰り返すと思います。
吉永さんみたいに尽くす人は損をしますし、これ以上、傷つく必要はないですよ」

「…ありがとう」

頑張って笑ってみたんだけど、失敗。

元カレにほんの少しでいいから藤野君の優しさがあれば、良かったのに。

「立ち振る舞いとか、デートの場所選びとかセンスあると思います。
仕事だって、やり手だから出世しているんだと思うんですけれど…。
でも、人間ってそんな見た目だけではダメですよ」

「うん、わかっているけどね~…」

わかっているんだけど。
バカを見てもそれ以上に好きだったんだなって。

「今度は吉永さんが元カレを見返すくらい、良い人を見つけて結婚すればいいと思いますよ」

「それが出来てたらこんな苦労してないわよ~」

涙腺崩壊。
見かねて藤野君がタオルを渡してくれた。

「大丈夫ですよ、吉永さんはきっと人が羨むような結婚が出来ます」

「…もう、そんな慰めはいいからー!!」

「そんなに泣くなら、僕の胸、貸しましょうか?」

顔に当てたタオルを少しずらし、藤野君を見る。

「どうぞ」

手を広げていた。

「…ちょっと借ります」

普段の私なら絶対にこんな事を言わないのに。

藤野君の元へ行こうと、立とうとしたら。

いつの間にか私の前に来て、その細い腕で抱きしめられていた。

「今日はここで思いっきり泣いて、そして忘れてください。
忘れないと、次のステップは踏めませんよ」

12歳も年下に甘える事になるなんて…

恥ずかしい!

でも、藤野君といるとそういう年齢差も気にならないくらい、甘えてしまった。
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