忘れたはずの恋
5.メビウスの輪
「うわあ…暑い」

9月だというのに真夏に近い暑さだった。

でも、あの7月の暑さよりは幾分かピークを過ぎた感じがする。

私は藤野君の本気を確かめにここにやって来た。

コースからの照り返しが真夏よりは弱いけれど…それでも、暑い。



「いらっしゃーい!!」

チーム監督の住吉さんが私たち3人の姿を見つけて大きく手を振った。

他のスタッフの方も笑顔で出迎えてくれた。

藤野君はというと。

ピット内で一人、壁にもたれかかって椅子に座っていた。

「今は声を掛けちゃだめだよ。幸平、集中してるからね」

チャラい祥太郎さんが口に人差し指を当てる。

「朝の予選、見せてあげたかったよ」

自分より格上の相手に一歩も引かず、攻めの姿勢を貫いて何と、ポールポジション!

とは相馬課長から聞いていた。

全日本より格下のレースとはいえ、全日本クラスのライダーが何人も出ていて、早々勝てそうにない、と聞いていたのに。

「本当に、幸平の彼女は凄いねえ。あいつの闘争心をここまで高めるんだもん」

……彼女?

「あっれえ?なんでそんなに怒るのかな?」

祥太郎さんは舌を出しながら笑っていた。

「…彼女でも何でもありませんよ」

低いトーンの私の声に祥太郎さんは手をヒラヒラさせて

「本当にあいつの事が嫌いならこんなところにノコノコやって来ないね」

図星なだけに言い返せない。

ムムッ…。
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