忘れたはずの恋
藤野と早々に解散すると、僕は一人、駅へ向かう。
外は蒸し暑く、まだ梅雨明けしていないどんよりとした雲が見上げた空一面を覆っていた。

さて、吉永さんになんて言おう?

来てもらわないと意味がない。




「激励会、ですか?」

目をまん丸くした吉永さんは僕をじっと見つめる。
金曜、昼休みに入る直前、僕は仕掛けてみた。

「そう、明日に」

明らかに吉永さんの目が泳いでいた。
急な話でどうしていいのかわからないのだろう。

「藤野君、来週はほとんど休むからね。
もう明日しかないんだ」

藤野は来週は火曜日から1週間、休む。
月曜日なんて業務的にも激励会なんて出来ない。

「で、どれくらい人が集まっているんですか?」

吉永さんは何やら考えながらそう言う。
思わずニヤリ、と笑ってしまった。

「80人くらい。
ここの局全体だけどね。
集配で50人くらいになってるかな」

人数を聞いて眼をぱちぱちさせている。
さて、仕掛けようとした時に。

「勿論、行くわよね?」

邪魔が入った。
田中さん、ちょっと横入り禁止。

何やら吉永さんに耳打ちしている。
さては、近藤君の件か。
それは僕が絶対に阻止するけど。

吉永さんが大きくため息をつく。

仕方がない、あまり使いたくないけど。

「明日、ひょっとして予定があった?」

申し訳なさそうに僕が聞く。
吉永さん、どうも僕に対しては嫌と言えないようなので。
ちょっとそれを利用させてもらいますね。

「いいえ、参加します」

吉永さん、本当は気が進まないんだろうね。
本当にごめんねー!!
これも君と藤野のため!!

「良かったー!
レースも観に行く吉永さんが来なければ意味ないしね」

僕は心の底から微笑む。
吉永さんの表情は悶々としていたけれど。

後は藤野、頑張れよ!!
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