忘れたはずの恋
「で、どう、調子は?」
7月上旬。
藤野はたまにしか仕事に来られなくなった。
「そうですね、まずまずだと思います」
そのたまに、の日。
僕は藤野を食事に誘った。
また、今晩遅くには鈴鹿へ移動するとの事。
「そう、その仕上がりがどれだけか、今から楽しみにしていますよ」
「頑張ります」
目がキラキラと輝く藤野を見て、本当に羨ましいと思う。
「ところで、今週末なんですけど」
僕は藤野からもらっている予定表を広げた。
「土曜日、仕事でしょ?
その日に君の激励会をしようという話が上がっていてね」
「えっ?」
藤野は意外そうに僕を見つめる。
「それくらいはしますよ、上司として」
「ええっ、でも、急すぎじゃないですか?
なんだか申し訳ないです」
自分が仕事を休んでいる事を特に気にしているから余計に、なんだろうね。
「いいんじゃない?
まあ、藤野の都合さえ良ければ、の話だけれども」
「僕は全く問題がないです。
逆にこういう事でロードレースへの理解を得られれば」
…その強い意志を持った目、僕は大好きだな。
僕も昔はそういう目をしていた。
「まあ、急なんでどうなるかわかりませんけれど、吉永さんにも来るように言いますね」
その瞬間、彼の顔は19歳のまだあどけなさが残る表情を見せた。
急に顔が赤くなっている。
可愛くて宜しい。
「ええ…でも、来てくれますでしょうか?」
不安そうなその表情に僕は思わず微笑む。
「予定がなければ、ね」
「…彼氏とデートとか」
案外、ネガティブなんですね。
「彼氏はいないと思いますよ」
前に付き合っていた奴は僕は知ってますけれど。
それ以降は付き合っている人の事を聞いたことがありませんし。
「…でも、話なんてする時間、ないか」
バイクの事に関しては自信があるのに、こういう事に関しては全くですね。
「そこは一瞬の隙を狙うんですよ。レースの駆け引きと一緒です、基本は」
「…ちょっと違う気がする」
藤野、頬、膨らんでますよ。
「すべては君次第、だと思いますけれどね。
吉永さん、藤野の事は嫌いではないはずだし。
押せばどうにかなりそう。だからそこは藤野が頑張る。
せっかく8耐も行ってくれる、と言ってますので僕、協力しますよ」
そう言うと藤野は大きくため息をつく。
「どう頑張っていいのか、わかりません」
「何気なく、手に触れてみては?」
「…セクハラまがいですよ」
その瞬間、僕は藤野の細い手を握り締めてやった。
目をまん丸くして僕を見つめる。
「さすがにこんな風に握ったらダメですけれどね。
仕事等でそっと指先にでも触れてみてください。
本当に嫌な人なら慌てて手を払います。
でも、どこかで気持ちが通じていれば…
お互い、心の片隅にポッと温かい何かを感じるはずです」
僕は藤野の手を離した。
「それで、吉永さんは藤野の事を他の人より意識し始めると思いますけれどね」
僕と早希子さんはそうでした。
それがすべての人に当てはまるとは思いませんけれど。
でも…
そんな気がするのです、僕は。
7月上旬。
藤野はたまにしか仕事に来られなくなった。
「そうですね、まずまずだと思います」
そのたまに、の日。
僕は藤野を食事に誘った。
また、今晩遅くには鈴鹿へ移動するとの事。
「そう、その仕上がりがどれだけか、今から楽しみにしていますよ」
「頑張ります」
目がキラキラと輝く藤野を見て、本当に羨ましいと思う。
「ところで、今週末なんですけど」
僕は藤野からもらっている予定表を広げた。
「土曜日、仕事でしょ?
その日に君の激励会をしようという話が上がっていてね」
「えっ?」
藤野は意外そうに僕を見つめる。
「それくらいはしますよ、上司として」
「ええっ、でも、急すぎじゃないですか?
なんだか申し訳ないです」
自分が仕事を休んでいる事を特に気にしているから余計に、なんだろうね。
「いいんじゃない?
まあ、藤野の都合さえ良ければ、の話だけれども」
「僕は全く問題がないです。
逆にこういう事でロードレースへの理解を得られれば」
…その強い意志を持った目、僕は大好きだな。
僕も昔はそういう目をしていた。
「まあ、急なんでどうなるかわかりませんけれど、吉永さんにも来るように言いますね」
その瞬間、彼の顔は19歳のまだあどけなさが残る表情を見せた。
急に顔が赤くなっている。
可愛くて宜しい。
「ええ…でも、来てくれますでしょうか?」
不安そうなその表情に僕は思わず微笑む。
「予定がなければ、ね」
「…彼氏とデートとか」
案外、ネガティブなんですね。
「彼氏はいないと思いますよ」
前に付き合っていた奴は僕は知ってますけれど。
それ以降は付き合っている人の事を聞いたことがありませんし。
「…でも、話なんてする時間、ないか」
バイクの事に関しては自信があるのに、こういう事に関しては全くですね。
「そこは一瞬の隙を狙うんですよ。レースの駆け引きと一緒です、基本は」
「…ちょっと違う気がする」
藤野、頬、膨らんでますよ。
「すべては君次第、だと思いますけれどね。
吉永さん、藤野の事は嫌いではないはずだし。
押せばどうにかなりそう。だからそこは藤野が頑張る。
せっかく8耐も行ってくれる、と言ってますので僕、協力しますよ」
そう言うと藤野は大きくため息をつく。
「どう頑張っていいのか、わかりません」
「何気なく、手に触れてみては?」
「…セクハラまがいですよ」
その瞬間、僕は藤野の細い手を握り締めてやった。
目をまん丸くして僕を見つめる。
「さすがにこんな風に握ったらダメですけれどね。
仕事等でそっと指先にでも触れてみてください。
本当に嫌な人なら慌てて手を払います。
でも、どこかで気持ちが通じていれば…
お互い、心の片隅にポッと温かい何かを感じるはずです」
僕は藤野の手を離した。
「それで、吉永さんは藤野の事を他の人より意識し始めると思いますけれどね」
僕と早希子さんはそうでした。
それがすべての人に当てはまるとは思いませんけれど。
でも…
そんな気がするのです、僕は。