忘れたはずの恋
しかし、よくこんな子がこの会社に入ってきたな、と改めて思う。

最初はどう扱ってよいのかわからないところもあったけど、レースから離れた日常は。

ごく普通の若者。

ただ…年齢差12歳、年上の女性を好きになってしまってどうして良いのかわからなくて。

迷っている。
けれど、答えは…出ている。
出ているけれど、彼女を傷つけたくないから強引に行けない。
本物の恋、だよね。

ほんの少しだけ、その恋のお手伝いをしようと思ったのに。

どうやらどっぷりとお手伝いをすることになりそうだからね。

何せお相手は。

一筋縄ではいかない。

藤野を管理するより、吉永さんをコントロールする方がうんと難しい。

思わず笑いそうになる。



中々進展がなく、もうすぐ8月が終わる。

その日は今にも雨を降らせそうな黒い雲が空の遠く向こうに見えていた。

一雨来るかな。

そういえば今日、来客があったはず。

なんて、この時は本当に暢気に構えていた。
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